最終更新日: 2026年4月。平準化の一般的な定義、標準化との違い、平準化がされていない場合の兆候に関するセクションを追加しました。
この電子書籍では、「今の働き方がうまくいかない理由」「柔軟なプロセスを構築する 7 つの重要ステップ」「一般的な戦略・運用ワークフローへのステップの適用方法」を紹介します。
平準化とは、業務やリソースの量・タイミングに生じる偏りを均一に整える手法です。プロジェクト管理の文脈では「リソース平準化」と呼ばれ、人員・予算・設備などの資源配分を最適化し、過負荷や遊休を防ぎます。
本記事では、リソース平準化の基本から実践方法までを順を追って解説します。実践例やベストプラクティスも交えて紹介します。
平準化(へいじゅんか)とは、量やタイミングにばらつきがある物事を均一に整えることを指します。英語では「レベリング(leveling)」と訳され、「均等化」とも言い換えられます。
平準化の考え方は、さまざまな分野で活用されています。製造業では「生産平準化」として、生産量の波を抑え効率を高める手法が広く知られています。
建設業では「施工時期の平準化」により、繁忙期と閑散期の差を縮小し、人材や設備の稼働率を安定させます。ビジネス全般においても「業務平準化」として、特定の人や時期に業務が集中しないよう調整する取り組みが進んでいます。
プロジェクトマネジメントの領域では「リソース平準化」と呼ばれ、人員・予算・設備といった資源の配分を最適化する手法として用いられます。本記事では、このリソース平準化に焦点を当てて解説します。
平準化と標準化は混同されやすい言葉ですが、目的とアプローチが異なります。それぞれの違いを整理しましょう。
平準化: 量やタイミングの偏りをなくすこと。作業負荷や生産量のばらつきを均一にし、リソースの過不足を防ぐことが目的です。
標準化: 手順やルールを統一すること。作業の品質やプロセスを一定に保ち、誰が行っても同じ成果を出せる状態を目指します。
プロジェクト管理の観点で見ると、標準化は「どのように作業を行うか」を定義するものです。一方、平準化は「いつ・誰が・どれだけ作業するか」を調整するものです。
たとえば、タスクの手順書を作成して業務フローを統一するのが標準化です。チームメンバー間で作業量の偏りが生じないようにスケジュールを組み直すのが平準化です。
どちらもプロジェクトの安定運用に欠かせません。標準化で品質を担保しつつ、平準化で負荷を均等にすることで、チーム全体の生産性が向上します。
リソース平準化 (resource leveling、リソースレベリング) とは、投入可能なリソースを超過せずにプロジェクトを完遂できるよう、過剰な割り当てやスケジュールの競合などが生じた際に用いられるプロジェクトマネジメントのテクニックです。
リソース平準化作業を行うことで、プロジェクトを完了するために必要な時間、資材、ツールが調整できます。
リソース平準化を行う目的は、投入可能なリソースを最大限に有効活用しながら、プロジェクトの時間、費用、スコープの制約に対応することです。
リソース平準化では、同じリソースを要する複数のプロジェクトにおいてそれらのニーズのバランスをとることが求められるので、プロジェクトマネージャーの力が試されます。
では、具体的にどのような場面でリソース平準化が必要になってくるのでしょうか。チームのニーズにより、以下のような状況が考えられます。
締め切りを守ることが現在のプロジェクト目標である場合は、投入可能なリソースを増やす必要があるかもしれません。
プロジェクト目標が現在の手持ちのリソースの限度内でプロジェクトを遂行することである場合には、締め切りを延長する可能性を検討する必要があるかもしれません。
リソース平準化を行えば、過剰な負荷や偏りを防ぐために、リソースの割り当てやプロジェクトのスケジュールを調整できます。そうすることで、プロジェクトの成果物の質を維持できます。
記事: スケジュール管理を最大限効率的に行う方法を解説リソース平準化と同様、「リソース円滑化」もビジネスシーンでよく用いられる言葉で、双方ともリソース管理のテクニックです。
この 2 つのテクニックの主な違いは、プロジェクトで最も重視される制約条件です。リソース円滑化では時間的な制約が重視されるのに対し、リソース平準化ではリソースの利用上限が焦点となります。
たとえば、あるタスクの作業を 5 日間連続で 1 日 8 時間行う予定が入っているとします。しかし実際のところ、そのタスクを完了するために必要な時間は 30 時間のみなので、スケジュールを 1 日 6 時間に変更します。
これがリソース円滑化です。円滑化したことで、プロジェクトの締め切りに影響を及ぼさずに他の作業を行う余裕が生まれます。
リソース平準化は、リソースへの過剰な割り当てが生じた際に使用します。一方、リソース円滑化はリソースの不均等な割り当てが生じた場合に使用します。
リソース平準化ではプロジェクトの開始日や終了日を柔軟に調整できますが、リソース円滑化ではプロジェクトの日付を変更できません。過剰な割り当てによる競合を解決するためにリソース平準化を使用したら、それに続いてリソース円滑化を行うとさらに効果的でしょう。
記事: ビギナーズガイド: 制約理論リソースの平準化が行われていないプロジェクトでは、さまざまな問題が表面化します。以下のような兆候が見られる場合、平準化の見直しが必要かもしれません。
メンバーの燃え尽き: 特定の担当者にタスクが集中し、長時間労働や過度なプレッシャーが常態化します。モチベーションの低下や離職リスクにもつながります。
ボトルネックの発生: 一部の工程に作業が滞留し、後続タスクが進められなくなります。プロジェクト全体の進行が止まる原因になります。
納期遅延: 負荷の偏りによりスケジュール通りに作業が完了せず、締め切りを守れないケースが増えます。
遊休リソースの発生: 忙しい人がいる一方で、手が空いているメンバーや設備が活用されずに放置されます。コストの無駄につながります。
成果物の品質低下: 過負荷の状態で作業を進めると、確認不足やミスが増え、アウトプットの質が下がります。
こうした課題に心当たりがある場合は、現在のリソース配分を見直すことで改善できる可能性があります。次のセクションでは、平準化によって得られるメリットを詳しく見ていきます。
リソース平準化は、リソースへの過剰な負荷を避けながらも、プロジェクトの要件にしっかり対応できるための手法です。プロジェクトマネジメントだけでなく、チームのワークライフバランスを維持するためにも役立ちます。
リソース平準化を行えば、手持ちのリソースを最大限に有効活用できます。また、プロジェクトの中でリソースの追加が必要なものはどれで、締め切りが調整可能なものはどれかを判断できます。
リソース平準化を行えば、プロジェクトの大幅な遅延を防げるため、プロジェクト費用や人件費の損失を最小限に抑えられます。リソースのニーズに対応しながらも、会社の現在のキャパシティや財務資源を超過する事態を防げます。
人材リソースへの過剰な割り当ては働きすぎにつながり、チームメンバーのストレスの原因となります。リソース平準化を行えば、過剰な割り当てによる問題を解決し、チームメンバーのキャパシティを配慮した締め切りの調整を行えます。
平準化を行えば、プロジェクトの成果物の品質を同じ水準に保つことにより、リソースと顧客の期待内容の双方を管理できます。総じて、リソース平準化は予算の問題、リソースへの過剰な割り当て、プロジェクトの遅延などを解決するために役立つテクニックです。
記事: チームの仕事の効率を向上させる 9 つの方法リソース平準化を実際に活用する方法を分かりやすくするために、以下に具体例を紹介します。
【状況】 とあるプロジェクト用に、デザイナーにプロトタイプを作成してもらう必要がありますが、デザイナーのダブルブッキングが生じ、デザインチームも予定に空きがありません。
【リソース平準化を活用した解決策】 プロジェクトの開始日をデザイナーの予定が空く 2 日後に変更します。デザイナーの仕事のペースは速いので、プロジェクトの終了日はそのままに保ちます。
【状況】 IT チームでは、会社のコンピューターが感染したウイルスに対処するため、大量のIT リクエストに対応していますが、会社の既存のウイルス対策ソフトはその強力なウイルスを撃退する能力が不十分です。
【リソース平準化を活用した解決策】 チームはコンピューターを修復するために、新しいウイルス対策ソフトへの投資を決定しました。
【状況】 マーケティングチームでは、新しい SNS キャンペーンをローンチするため、担当者からの承認を待っていますが、その担当者は現在体調を崩して欠勤中です。
【リソース平準化を活用した解決策】 緊急性が低いキャンペーンなので、キャンペーンのローンチを数日延期し、マネージャーがレビューする時間を確保します。
記事: チームを成功に導くプロジェクトカレンダーの作成方法と管理方法プロジェクトリソースの平準化をスキルのレパートリーに加えれば、より効果的なリーダーとしてチームに貢献できます。チームで活用できるリソース平準化戦略を以下に紹介します。
プロジェクトクリティカルパス法は、リソースの制約を考慮せずにプロジェクト期間を算出するために、広く用いられている平準化テクニックです。
この手法では、プロジェクトにおいて依存関係がある作業を合理的な順序でつなげ、各作業の開始と終了の最も早い日と最も遅い日を算出します。「クリティカルパス」とは、プロジェクトを完遂するために完了を要する活動の内、所要時間が最長である一連のタスクを指します。
クリティカルパス (最長経路上) の一連の活動を特定したら、「フロート」(余裕時間) と呼ばれるスケジュール調整の柔軟性を判断できます。
トータルフロート (最大余裕時間) とは、プロジェクトの終了日に影響を与えることなく、タスクを最も早い開始日からどれだけ遅らせることができるかを指します。
計算法: (最遅終了日) – (最早終了日) または (最遅開始日) - (最早開始日)
フリーフロート (自由余裕時間) とは、後続の活動の開始日に影響を与えずに遅らせることのできる日数を指します。
計算法: (後続タスクの最早開始日) – (現行タスクの最早終了日)
クリティカルパス上のタスクのフロート (余裕時間) は 0 です。そのタスクの 1 つに遅れが生じた場合、プロジェクト全体が遅れることを意味します。
たとえば、IT チームが既存のセキュリティシステムを新しいシステムと交換する際に、2 つのクリティカルタスクと 2 つの非クリティカルタスクを特定したと想定しましょう。
【クリティカル】
全社において既存のセキュリティソフトウェアの使用を 2 日以内に中止する
会社の全デバイスおいて新しいソフトウェアのインストールとテストを 4 日以内に完了する
【非クリティカル】
ソフトウェア業者との購買取引の詳細を 1 日以内に締結する
新しいソフトウェアのユーザーガイドを 2 日以内に作成する
クリティカルパス上の作業はプロジェクトを完了するために不可欠ですが、非クリティカルなタスクは任意のオプションです。この例におけるプロジェクト期間は最短で 6 日間です。
顧客の要件を満たすために、プロジェクトを締め切り以前に納品する必要がある場合もあります。そういった場合には、複数のタスクを並行して実施するファストトラッキングを使用すれば、プロジェクトを加速させられます。
ファストトラッキングは、作業をある程度同時進行できる場合にのみ使用できるスケジュール短縮のテクニックです。たとえば、依存関係がある作業はずらし、依存関係がない作業は並行して進められます。
ファストトラッキングの例として、ソフトウェア開発チームがウェブサイトのバックエンドを構築し始め、その間にデザインチームがウェブサイトのプロトタイプを完了させる場合などがあります。期限内かつ予算内に仕事を完了できる一方で、後に修正が必要となる可能性も高くなるので注意が必要です。
ファストトラッキングを適用できない場合、またはその効果が不十分な場合には、クラッシングというテクニックを実施できます。クラッシングは、プロジェクトに追加のリソースを投入してタイムラインを短縮する手法です。
これを行う場合には、高優先度タスクのニーズを見極めた上で、最も高価値かつ低コストのリソースを選択する必要があります。
記事: タスクに優先順位を付けて、仕事時間を管理する方法たとえばマーケティングチームで、とあるプロジェクトの締め切りが 2 日早くなったため、ライターを 2 名追加する必要があるとします。予備のチームメンバーはいないので、プロジェクトマネージャーは過去に提携したことがあるフリーランスのライターを 2 名採用することを決めます。
プロジェクトのスケジュールを短縮するためにクラッシングを使用する場合は、追加リソースを取得することについて、必ずマネージャーまたは顧客から承認を得ましょう。
クリティカルチェーン法は、クリティカルパス法をアップデートした手法です。クリティカルパス法とは違い、クリティカルチェーン法では、リソースの制約を考慮します。
ここで言う「クリティカルチェーン」は、タスクとリソース両方の依存関係を考慮した上でのタスクの最長経路を指します。リソースは 1 度に 1 つのタスクのみに割り当てられます。
この手法を使ったプロジェクトのスケジューリングでは、タスク用に必要なリソースの一覧を作成し、必要に応じてそれらのリソースの利用状況を再評価します。
クリティカルチェーン法では、クリティカルチェーン上の活動で不測の事態が生じた場合に備え、最後のタスクとプロジェクト終了日の間に「バッファー」と呼ばれる期間を挟みます。タスクを早く完了した場合には、その分バッファーが増します。
逆に、クリティカルチェーン上の活動に遅れが生じた場合には、そのバッファー期間を使うことになりますが、プロジェクト完了日には影響が及びません。
たとえば、コンテンツ記事を期限内に公開するために、マネージャーは必要なリソース (ライター、デザイナー、開発者など) を判断します。そして、コンテンツレビューやデザインレビューの間の工程で遅れが生じた場合に備え、5 日間のバッファーを設けます。
クリティカルチェーン法は、リソースに過剰な負荷をかけずにプロジェクトを期限内に完了するため、プロジェクト期間とリソースの現実的な予測を目指す手法です。
円滑な共同作業のための戦略、テクニック、インサイトなど、世界トップレベルの効果的なコラボレーションを支えるすべてをご紹介します。
リソース平準化は経験を積むにつれてスムーズに進めやすくなりますが、慣れないうちは効率的に進行できないかもしれません。実践する際に活用できるヒントとポイントを紹介します。
ガントチャートとはプロジェクトのスケジュールを視覚化した横棒グラフで、クリティカルパスを特定し、計画するために用いられるツールです。
ガントチャートを使えば、タスクの依存関係、開始日と終了日、プロジェクト期間の全体像を簡単に俯瞰できます。また、プロジェクトを進行させながら、必要に応じてチャートをアレンジし直したり、日付を調整したりできます。
ガントチャートテンプレートを作成一部のプロジェクト管理ソフトウェアには、過剰な割り当てによる競合の解決に役立つリソース平準化のアルゴリズムが備わっています。
プロジェクト管理ソフトウェアを使えば、チームメンバーのスケジュールを可視化しやすくなるため、スケジュールの競合やダブルブッキングを未然に防げます。
ネットワーク図も、プロジェクトのスケジュールを視覚化するためのツールの一種です。タスクの順序を示す一連のボックスと矢印から成る図として表されます。
スケジュール計画の他、プロジェクトの進捗を追跡するためにも使用できます。それぞれがタスクと期間を表す一連のボックスをつなげることにより、非クリティカルパスとクリティカルパスを特定できます。
過去のプロジェクトプランやスケジュールをアーカイブに保存していれば、類似するプロジェクトを実施する際により的確なプロジェクト計画を策定することができます。
成功したプロジェクトだけでなく不成功に終わったプロジェクトも参照すれば、各タスクにどれほどの余裕を設けるべきか、どんなリソースが必要になるかをより正確に予測できます。プロジェクト開始前に投入可能なリソースを把握しましょう。
リソース平準化は、まずプロジェクトスコープを明確に定義し、それからリソースのニーズを現実的に予測した場合に成功の確率が高まります。より的確に予測するためには、以下の秘訣を試してみてください。
チームで予測を行い、個人的なバイアスを減らす
プロジェクトの潜在リスクを予測プロセスに含める
より幅広い可能性を対象に含めるために、特定の値ではなく範囲を予測する
より一貫性のある予測を行うために、毎回同じ予測テクニックを使用する
最初のリソース予測が正確であるほど、後で問題が発生してリソース平準化を実施する場合に大きな変更や見直しを行う必要がなくなります。
リソース平準化 (resource leveling、リソースレベリング) について、その定義とメリット、実践例、取り組み時のヒントを解説しました。リソース平準化はプロジェクト管理手法のひとつとして、プロジェクトを期限内に完了するために役立ちます。
リソース平準化には確かな管理スキルが必要ですが、ワークマネジメントソフトウェアを使えば、プロジェクトの調整スキルを新たなレベルへと高められます。
リソース平準化を用いて決定した過去の戦略は、IT テンプレートやマーケティングテンプレートなど、チーム用にカスタマイズされたテンプレートと組み合わせ、今後のプロジェクト計画やスケジュールの策定に使用しましょう。
スズキ株式会社 は、ワークロードの可視化とテンプレートの活用により、チームの作業負荷を均等に配分する仕組みを構築しました。その結果、ワークロード管理を積極的に活用したチームでは残業時間が 35% 削減されました。属人的なプロセスも解消され、再現性のあるリソース平準化が実現しています。詳しくはスズキの導入事例をご覧ください。
Benefit Cosmetics は、55 か国以上で展開するキャンペーンのリソース配分にワークロード機能を活用し、チームメンバーの稼働状況を可視化しました。過剰な割り当てを特定して業務を再分配した結果、年間 52 営業日分の工数を削減し、キャンペーン計画にかかる時間を 1 時間からわずか 5 秒に短縮しました。詳しくは Benefit Cosmetics の導入事例をご覧ください。
この電子書籍では、ワークマネジメントとは何かを解説し、ビジネスにどう役立つかをご紹介します。